いろいろ(166)「紫の女殺人事件」、「月のしずく」
本日も風邪引きの寝床でうつらうつらと読書。内田康夫「紫の女殺人事件」と浅田次郎「月のしずく」。
「紫の女殺人事件」は例によって作者の内田氏自身と彼が作り出した主人公浅見光彦探偵が実際に会ってるという設定で、これはやっぱり禁じ手としか思えないんだけど。幽体離脱の謎解きもあっけないし、犯人もすぐわかっちゃうしで、浅見光彦登場作品としては駄作の部類。
それに引き換え「月のしずく」はこれでもかっ、というくらいの人情中篇集で大変よくできました、の評価ですわん。描かれるオトコ達がカッコイイです。学歴のない労働者だったり、うだつのあがらない中国人経営者だったり、ヒトゴロシのやくざだったりするんですが。こんな優しい男がいるんだったらちょっとほっぺた舐めてみたいと思わせるような。縄田一男氏がこの本の解説で興味深いことを書いてます。作者が登場人物に入れ込んでしまうといけない、と。浅田作品はそのような危険が無い、という例なんですが。入れ込みすぎが鼻につく、という意味では上の内田康夫氏が自分を登場させるというのもその変形なのかもしれないし。縄田氏が引いていた例では、彼がある著名人の弔辞を頼まれたのだけど、我ながら不出来だと思っていたところ出版社からダメだしがでたのだと。曰く、書いている人が読者より先に泣いてしまってはいけないのだと。読者(弔辞だったら聞いている人かな)が泣けるような淡々とした文章にすべきなのだと。浅田作品はそのあたりの機微に長けているのだと。
う~む、勉強になりますなぁ。
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