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2010年7月11日 (日)

北欧神話(73) 第十九章<ヘルモードが勇敢な旅をする>

第十九章<ヘルモードが勇敢な旅をする>

 バルデルのお葬式の翌日、疲労したオーデンは神々を新たな会議に召集した。
「友よ、よく聞いてくれ」と彼は小さな声で言った。「我々の息子バルデルは死んだ。しかし我々は彼を取り戻そうとするのだ。」
 神々と女神達は注意深く耳を傾けた。
「ヘルモード、お前が最大の信頼を得る」とオーデンは言い、彼の息子たちのうちで一番勇気があるヘルモードを見つめた。「お前にスレイプネルを貸すから、ヘルに行ってバルデルを返してくれるよう交渉するのだ。この危険な旅を遂行できるものがいたとしたらそれはお前しかいない。」
 ヘルモードは無言で父を抱き、ヘルに向かって馬を駆った。スレイプネルは注意深く進み、9日にわたる長旅の後で彼らは無事に地獄の女神ヘルの恐ろしい住居にたどり着いた。
 ヘルモードはローケの根性の捻じ曲がった娘と、バルデルがアースゴードに戻ってくるためにどうしたらいいかを長時間にわたり交渉した。ヘルモードがイグドラシルの世界のすべてのものが善良の神バルデルを傷つけないと喜んで約束したということを語るのを、憎たらしいヘルは興味がなさそうに聞いていた。
「皆がバルデルに起こったことについて悲しんでいるのは大げさだろう」と彼女は短く言った。
「いや、そうじゃない。皆が皆バルデルの死を悲しんでいる」とヘルモードは答えた。「なんだったらそれを証明させてくれ。」
 ヘルは皮膚の無い部分の顔からばらばらの髪の一筋を払った。ヘルモードは彼女の視線の中に、彼をアースゴードに帰すものかと思っていることを見て取った。
「では、こうしよう」と彼女は最後に言った。「九つの世界のすべてのものがバルデルの死を悼んで泣いたときにまたここに戻っておいで。そのときまた考えよう」と彼女は言い、彼女の大広間をうめきながら足を引きずり出て行った。
 ヘルモードはこの伝言を持って、拍車をかけてアースゴードに戻った。
 皆が泣いた。鳥も、風も、海も、動物も、人間も、植物も。フリッグはアースゴードの若々しい芝に沈み込み、午後だというのに露をいっぱい溢れさせた羽衣草と一緒に泣いた。
 巨人までもが、善良がなくなってしまったことを嘆いて泣いた。一人を除いて、すべてのものが泣いた。
 神々は最後にその生き物を見つけ出した。それは遠くの洞穴に隠れていたテックという名の女巨人だった。テックは、バルデルの死を悼むかと聞かれたときに、ただ軽蔑するように意地悪く鼻で笑っただけで一言も答えなかった。約束や脅しをかけても彼女は態度を改めなかった。だから神々はついに世界に一人だけバルデルの死を悼んで泣かないものが居ると認めざるを得なかった。彼らにはテックが実際には誰なのかがわかっていたが、どうすることもできなかった。
 ローケは神々の側からの好意の最後の一オンスを使ってしまっていたのだった。もはや彼は彼らの視界から消されねばならなかった、永久に。

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