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2010年7月11日 (日)

北欧神話(72) 第十八章<バルデルが射殺される>(2)

第十八章<バルデルが射殺される>(2)

 彼の問いに答えは無かった。ローケはすでに姿を消していた。
 死んだバルデルと、何も知らずにいる兄弟を目の当たりにして、すべての神々は心が砕けるような悲しみに襲われ、おおっぴらに泣き始めた。
 ティールとトールは彼らの半分血のつながった盲目の兄弟に走り寄り、宙を探っている彼の腕を取り、何が起こったのかを彼に告げた。
 ヘーデルの顔は真っ青になり、彼は草の上に倒れた。
 沈黙した神々はゆっくりと立ち上がった。慣習により彼らのうちの一人がヘーデルの犯したことに報復をしなければならないのだった。彼らには誰が黒幕なのかがわかっていたが、矢を放ったのはヘーデルの手だったのだ。二重の不幸だった。オーデンの息子はもう一人死ななければならないのだ。
 悲しみがアースゴードを覆った。誰もがたたずみ、実際に悪事を働いたものがどこに隠れているのかについては誰も注意を払わなかった。彼が罪をあがなうべきときだろう。バルデルの運命と新しい悲しみ、つまりそれに続く避けられない悲劇がすべてに影を落としていた。

 バルデルは空色の夏の宵に葬られた。彼の父と母は彼を最も大きく最も美しい神々の長い舟に乗せた。それはあまりに立派で重かったので彼らは水辺までそれを押していくことができなかった。力持ちで知られるヒロッキンという名の巨人が狼に乗ってやってきて手助けをした。
 バルデルの愛する妻ナンナは夫の死を悼んでずっと泣き通しだったが、心臓が破れて倒れてしまった。神々は彼女が夫と一緒に死の国に旅立ちたがったことがわかったので、彼女をバルデルの傍らに横たえた。
 その大きな舟が水に向かって滑っていくとき、最後の陽光が水に跳ね返った。
 オーデンは水の中に進み、燃えるたいまつを舟の中に投げ入れた。舟の中の炎はすぐに広がり、空の色と溶け合った。神々は水辺にたたずみ、バルデルとナンナの最後の旅を見守った。

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