フォト
無料ブログはココログ

« 北欧神話(63) 第十四章<バルデルが悪夢を見る>(3) | トップページ | 北欧神話(65) 第十五章<トールのハンマーが盗まれる>(2) »

2010年7月11日 (日)

北欧神話(64) 第十五章<トールのハンマーが盗まれる>(1)

第十五章<トールのハンマーが盗まれる>(1)

 ある朝早くトールはトゥルンドヴァングの彼の家で、なんとなく何かがおかしいという不快な感じがして目を覚ました。彼が寝る前に寝床の横に置いておいたハンマーを手探りで引き寄せようとすると、それはあるべきところに無かった。
「ハンマー!」と彼は起き上がって周りを見回しながら叫んだ。ハンマーはまったく陰も形もなく消えうせてしまった。
 トールは寝床を飛び出した。皆を急いで招集しなければならない。彼のハンマーなしには巨人が襲ってきたときの神々の安全は保障できないから。
 トールと他の神々は速やかに会合を持った。そこでフレイヤの素早い鷹の羽で飛ぶことに一番慣れているものの一人であるローケが巨人国ヨートゥンヘイムに偵察に飛ぶことが決まった。
 ローケは鷹の衣装を取りに急ぎ、アースゴードの塀の上高く飛んだ。彼がヨートゥンヘイムに着くまでそれほど時間はかからなかった。ローケの鋭い視線は一人の太った巨人が異常に満足しているのをとらえた。それは金持ちの巨人トリムで、彼は自宅の庭で日向ぼっこをしながら自分の両手に惚れ惚れと見入っていたのだった。その両手には新しい金と銀の首飾りが巻かれていて、その太った巨人は太陽の光の中に座って、彼の所有するすべての美しいものを考えてニヤニヤしていたのだった。
 たかが庭に下りたのを見ると彼はその鳥を横目でずるがしこく見た。
「おやこれはなんとしたことか。借り物の羽を着たローケじゃないか!」と彼は言い、馬鹿にするように唇を突き出した。
「もしお前がハンマーを取り戻しに来たのだとしたら、神々と女神たち皆にそれは深く埋められて見つけるのは不可能だといってやれ。」トリムはその大きなおなかを満足げに掻いた。「そしてわしの富については、かねがね望んでいたとおりたくさんになったとな」と彼は付け加えた。
 ローケの鷹の目が彼をしげしげと調べた。
「多分、交換条件を、、、」と彼は言い始めたが、怒って手を振った巨人にさえぎられた。
「いいや、がらくたなんかは欲しくない。わしがハンマーを掘り出すのに値するものがあるとすれば、あの美しいフレイを妻に迎えるという約束だけだな」と彼は言い、ローケの気落ちした表情をみて満足して喘ぐほど笑った。
 彼がひどく咳きこみ始めたので、大きな犬達はキャンキャンほえて逃げ出し隠れてしまった。
 この伝言でローケは満足しなければならなかった。
 ローケが巨人トリムの提案を披露したとき、フレイヤは耳を疑った。
「なんで私が、女神の中で最も美しい私が、恥知らずな巨人と結婚するんですって!私が死んでからにしてちょうだい!」と彼女は鼻で笑い、息を早く深く吸ったので彼女の美しい首飾りの留め金がはじけてしまった。

« 北欧神話(63) 第十四章<バルデルが悪夢を見る>(3) | トップページ | 北欧神話(65) 第十五章<トールのハンマーが盗まれる>(2) »

北欧神話」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/561891/48851658

この記事へのトラックバック一覧です: 北欧神話(64) 第十五章<トールのハンマーが盗まれる>(1):

« 北欧神話(63) 第十四章<バルデルが悪夢を見る>(3) | トップページ | 北欧神話(65) 第十五章<トールのハンマーが盗まれる>(2) »