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2010年7月11日 (日)

北欧神話(62) 第十四章<バルデルが悪夢を見る>(2)

第十四章<バルデルが悪夢を見る>(2)

 神々のぐっと食いしばった顔の表情は彼らの不安を表していた。バルデルは彼らのあずかり知らない不安に脅かされているようだということが、彼らの勇気を阻害しているようだった。彼ら自身の王が自分で死の国へ行こうとすることは、彼らの感情をさらに暗くした。ヘルにはどうしてもというのでなければ誰も行こうとはしないのだった。
 会議が終わるやいなや、オーデンはスレイプネルにまたがり、彼の耳に、今回の旅は彼らが一緒にこれまで旅してきたどれよりも早く、賢く走らねばならないと囁いた。その灰色の牡馬はオーデンを乗せたまま待ちきれないように脚を踏み鳴らし、出発の掛け声を待っていた。
 スレイプネルはいつものように主人を速く確実に運んだ。彼らはほんの少しミーメルの国で立ち止まった。オーデンはそこでミーメルの頭にいくつかの問いを投げかけた。その後彼らはまっすぐに下に進んだ。その地域で一番ひどい場所、死の国ヘルへ。
 スレイプネルのひづめは、ニーフェルヘイムの粘土のような地面やジョルの凍るような水の上でも、それらに軽く触れるだけだけでその上を飛んで走った。そしてそのうちヘルの門の外にいるガルムの雄たけびが聞こえてきた。彼の赤い目が向かってくる神の王の目とあったとき、雄たけびは腰抜けのうなり声に変わった。
 スレイプネルは怖がりもせずにヘルの門を飛び越え、嫌な匂いがする茶色の粘土で覆われた墓の丘の前でオーデンが彼の手綱を引き締めるまで走り続けた。
 オーデンが彼の槍の柄を丘に突き刺すと、鋭く冷たい雨が彼らの上に降りかかり始めた。
「出てこい、魔女よ!」と彼は命じた。
「私の眠りを妨げるのは誰だ?」と甲高い声が不平を言った。
恐怖を呼び起こすような醜い姿が丘の上に現れ始めた。
「私は地下で横になっていたいのだ。雪に覆われ、雨に打たれ、露に濡れて。これまでずっとそうしてきたように。こんなふうに私を私の家から呼び出すなんて、あんたはなにが望みなのだ?」とそれはぶつぶつ言った。
 オーデンは反感を持ってその幻影を眺めた。彼は自分の本当の名を言わないようにしようと思った。
「私の名はヴェグタムという。あそこのヘルの広間の横を駆け抜けたとき、大事な客のために場所が用意されているのを見た。彼女は誰を待っているのだ?」
「あああ、、、あんたはその魔法の力で私にそれを言わせるのだね」とその魔女はため息をついた。「あんたの探している答はバルデルだ。もうこれ以上はしゃべらない。」
「まだ黙り込むことは許されない!バルデルに死をもたらすのは誰だ?」
「あんたはまた私にしゃべらすんだね!」と幻影はしゅっと息を吐きながら言った。「あんたの探している答はヘーデルだ。もうしゃべらさないでおくれ。」
 オーデンは身を堅くした。彼自身の息子ヘーデルが兄弟を殺そうというのか?

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