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2010年7月11日 (日)

北欧神話(61) 第十四章<バルデルが悪夢を見る>(1)

第十四章<バルデルが悪夢を見る>(1)

 フェンリスが繋がれてからというものアースゴードの緑の景色に静かさが訪れた。ローケは神々が彼の子どもに対して行った仕打ちに憤慨して、アースゴードには近寄らなかった。
 オーデンは吟遊詩人の蜜酒に満足し、ティールの傷も癒え、トールは狼とローケを目にせずに済むことに喜びながら家に居た。
 けれども新しい心配事がゆっくりと広がっていたのだった。オーデンとフリッグの息子、皆から愛されている神バルデルがひどい悪夢にうなされるようになったのだ。神々はそれを深刻にとらえた。生命力溢れ、性格のよいバルデルがそんな不吉なことにみまわれるなんて。
 バルデルは日が経つにつれ、意気消沈し、消耗してきた。そしてオーデンまでも心配になってきたのだった。彼の息子は今やアースゴードの神々皆に、自分の未来がどうなるかわかる、もうすぐ死ぬのだ、と言っているのだ。
 神の国の雰囲気は前とは異なるものになってしまった。
 バルデルの不快な夢の原因について議論しなければならない、とオーデンは考えた。バルデルがなぜ悩まされているかがわかれば、全体が明らかになろう。
 悪夢についてのバルデル自身の言葉に耳を傾けるために運命の泉の周りに集まった神々は言葉も無く、重苦しい雰囲気だった。
 父と母と他の神々の前に立ったバルデルの顔は悲しげだった。
「私が自分自身の死を見ているというのは本当です」と彼は単刀直入に言った。「親愛なる友人たちの支持をありがたく思いますが、死はすぐそこまで来ていると感じます。毎晩自分が死んでいるのを見るのです。」
 フリッグは叫んで泣き出し、オーデンは身を固くした。バルデルは彼らにとって、いやアースゴード全体にとって、目に入れても痛くない存在だったから。
 フリッグは涙を拭いて立ち上がって、黙りこくっている神々を見回した。
 「これは単純に皆の宣誓を要求しなければなりません」と彼女はきっぱりと言った。「私自身この九つの世界中に生きているものすべてがバルデルを傷つけないように宣誓させようと思います。」
 フリッグは青白い顔でまた座った。
 オーデンは討議場の彼の場所にじっと座ったままで、深く思考に沈んでいた。しばらくすると彼は片方の手を上げ、互いにぶつぶつ言っている神々を鎮めた。
「私は実際にバルデルの夢がどうしてやってくるのかを知らねばならない!今日にでも私はヘルに旅立ち、彼が我らのもとを去るのか否かを尋ねてこようと思う。」

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