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2010年7月11日 (日)

北欧神話(57) 第十二章<オーデンが吟遊詩人の蜜酒を持ってくるのに成功する>(3)

第十二章<オーデンが吟遊詩人の蜜酒を持ってくるのに成功する>(3)

バウゲはこの力持ちの巨人に逆らう勇気は無く、しぶしぶ彼を兄のスットゥングが蜜酒を隠した岩場まで連れて行った。彼らがそこに着くと、オーデンはベルトから岩用錐をはずした。
「穴をあけよ、バウゲ」と彼は命じた。「蜜酒が隠してある部屋に届くまで。」
 バウゲはオーデンを憂鬱そうに見つめたが、反抗する勇気は無かった。彼はしばらくがんばってから、穴に向かって不機嫌にうなずいた。
「さあ貫通したぞ」と彼はもごもご言い、その場を離れたがった。しかしオーデンは彼を放さなかった。
「そんなに急ぐな、バウゲ」と彼は怒鳴り、実をかがめて穴に向かってまっすぐ息を吹き込んだ。すると埃の雲が彼の顔をめがけて飛んできた。
「もう少し掘るんだな。」
バウゲは怒って鼻を鳴らしたが、また穴を開け始めた。そのうちに錐はまっすぐ岩の中の部屋に落ちていった。
 オーデンは、バウゲが貫通させた瞬間、「ほら、あの上の方を見ろ!」と叫び、岩山の頂を指差した。
 バウゲは目を細めて不安げに岩山の上の方を見た。彼が別の方向に頭を向けたので、オーデンは蛇に変身して開けたばかりの穴の中に入っていった。蛇が穴の中に消えるのを目に入れたバウゲは、怒りの叫びをあげ、鋭い錐をそのあとに差し入れた。けれどもオーデンはすでに岩の中の部屋に着いており、そこで見栄えの良い若者に変身していた。彼はグンレードと魔法の吟遊詩人の蜜酒を探した。
 岩の奥深く、三つの巨大な樽の横に、彼はみじめに孤独に座っている彼女を見つけた。
 グンレードは若者の姿を見ると目を輝かせた。彼らはすぐに話し始め、心優しく善良な若い女巨人であるグンレードは、その格好よい若者が彼女に語りかける美しい言葉に心を打たれた。彼女はその男に惚れたので、三日後、蜜酒を三口だけ味わってもよいと約束した。
 男は一口で最初の樽を飲み干し、二口目で二つ目の樽を、最後の一口で三つ目の樽を飲み干した。
 かわいそうなグンレードはびっくりして空の樽と裏切った男を見つめた。彼女の目の前で彼は巨大な鷲に変身し、岩山の秘密の抜け道から力強く羽ばたいて脱出した。
 グンレードはどうしてよいかわからず叫び始め、巨人スットゥングがとんできたが、そのとき鷲はちょうど秘密の出入り口を飛んで抜け出ていくところだった。スットゥングは急いで同じくらい大きな鷲に変身し、後を追った。
 そして前代未聞の追跡となった。
 鳥たちの力強い羽ばたきの音はアースゴードでも聞こえたほどで、そこでは神々は不安げに石塀の上で成り行きを見守っていたのだった。
 二羽の大きな鷲が近づいてくるのを見ると彼らは何が起こるのかを予想し、急いで塀の前に大きな器を用意した。
 鳥達は互いに近づいたが、最後に、最初の鷲は貴重な荷物を少し後ろに吐き出すことで速度を稼ぐことに成功した。そのおかげで鷲は塀の中に入ることができた。
 こうしてオーデンは、鷲の翼をついに休めることができたのだった。彼はほうほうの体で神々が据えた器の中に蜜酒の残りを吐き出した。
 追ってきた鷲は耳を劈くような叫びを残して追跡を諦め、塀のところできびすを返した。そして重い翼を翻してヨートゥンヘイムに戻っていった。
 オーデンは鷲の服を脱いで満足のため息をついた。さあこれから神々、女神たち、何人かの選ばれた人間たちが魔法の蜜酒を味わえるのだ。アースゴードの塀の外で、彼の口からではなく肛門から流された蜜酒はミッドゴードの湖に入った。吟遊詩人の蜜酒は残念なことに鳥の体の中で運ばれることに耐えられなかったらしく、その湖の水を飲んだ人間はまったくひどい詩人になった。今日でも水で薄めた蜜酒を飲んでしまう人間がいる。そのミッドゴードの湖の水があらゆる水路を経て広がってしまったから。

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