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2010年7月11日 (日)

北欧神話(43) 第八章<占い師グローアがトールの頭から砥石のかけらを取り除こうとする>

第八章<占い師グローアがトールの頭から砥石のかけらを取り除こうとする>

 トゥルンドヴァングにある家にトールが戻ったとき、彼はちょっと頭に痛みを感じた。額に指を這わせて見ると、フルングネルの砥石のかけらが頭に食い込んでいるのだとわかった。
シフはそれをみて夫のことが心配になり、巫女のグローアに家に来て石を取り除く魔法の歌を歌ってくれと頼んだ。
 トールは高座に座り、グローアの単調な歌を聴くことになった。石が表面に浮きかかるとトールは彼女の巧みさがうれしくなり、彼女がますます調子がよくなるようなことを言おうと思った。
 「ねえ、グローア」と彼はやさしく言った。「お前は歌がうまいね、よい夫を持っているし。」
 グローアは歌を途中でやめ、トールを見つめた。彼女は夫が旅の途中で死んでしまうのではないかと心配していたのだった。
 「お前の夫は生きているよ」とトールは請け負った。「私自身が助けたのだから。凍えるヨートゥンヘイムで怪我をしていたので、そこから担ぎ出してやったんだ。ひどい寒さで彼の足の親指の片方は凍っていた。彼をたたえるためにその痛んだ親指を折り取って空に投げ上げてやった。それは今、小さな星になって、巨人チャツセの目の星の隣にある。お前は彼が生きていることを喜んでよいのだ。」
 グローアはトールの言葉にとても胸を打たれたので、頬を伝う涙が止まらなくなり、もはや歌うことなどに心を集中することはできなくなってしまった。
 だから砥石のかけらはトールの頭に食い込んだままになってしまったのさ、ずっとね。でも傷跡は治ったから外から見ただけではわからないんだ。
 フルングネルとの戦いの後、トールはトゥルードヴァングの家にとどまり、休養した。静かな日々が続いたのだけれど、午後遅くになると彼は戦地に行くことが多かった。そこではミッドゴードからアースゴードへきた、死んだ勇者達が毎日戦いの練習をしていたのだ。彼らはアースゴードではエインヘリヤルと呼ばれていた。戦いが終わるとトールは彼らとともにヴァルハラについていった。底にはいつもうまい豚肉と蜜酒が長いテーブルの上にいっぱい供されていた。
 そうなのじゃ、予想がつかないローケがいなければアースゴードの毎日は平穏に流れていったのさ。けれども彼はそこにいたし、なにかが起これば必ず彼が一枚かんでいたのさ。まったく彼のせいではないときもあったし、彼のせいとしかいえないときもあったのさ。

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