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2010年7月11日 (日)

北欧神話(37) 北欧の神々の物語

「北欧の神々」
               
<北欧とは>
 北欧という言葉をきいたことがありますか?「欧」というのはヨーロッパという意味で、「北欧」というのはそのヨーロッパの北の方の地域、具体的にはヨーロッパ大陸の最北端にあるスカンジナビア半島とその周辺にある国々を指します。通常、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、アイスランドが北欧に含まれます。地球儀で見ると北の最果てにあり、どんなに寒い国々だろうかと思われるでしょうが、実際はメキシコ湾流という暖流が流れているために緯度が高いわりには気温が低くなりません。北欧各国の首都では、日本でいうと大体北海道の札幌の気候に似た気温となります。
 北欧を特徴付けているのは気温や地形よりもその緯度の高さによる日照時間の移ろいです。地球が傾いて自転しているために夏と冬で日照時間が変わるのは日本でも同じですが、地球儀の天辺に近い北欧では日照時間の差が非常に大きく、特に北部地方では真夏は太陽が一日中沈まない白夜になり、真冬は太陽が一日中あがらない極夜になります。けれども人々はそのような厳しい自然条件の中で自然と共生する生活をしながら高度な文化を作り上げました。

<北欧神話*>
 日本の「古事記」に相当する北欧神話は、北欧にキリスト教が普及するのが比較的遅かった(紀元一000年頃)ため保存状態が良く、古代の風習や考え方を現代に伝える良い資料となっています。中でも一三世紀ころにアイスランドの詩人スノッリ・ストルルソンがまとめた「スノッリのエッダ」が有名です。
エッダというのは歌謡の形の北欧古代詩を意味します。
 ギリシャ神話、古事記に出てくる神々のように北欧神話の神々も「人間臭い」いろいろな性格を持っています。北欧神話に特徴的なのは世界がどう構成されているかの詳しい説明があることです。神、巨人、人間、鍛冶が得意な小人等、それぞれ住む場所が決まっていました。彼らは一種の「種族」のように考えられていて、別の種族の住む集落に行き来することもでき、結婚して子どもをもうけることも可能だったのでした。
 
<天地創造>
 北欧神話では天地創造は以下のように説明されています。
 世界に最初にあったのものは深い大きな裂け目でした。それはジヌンガガープと呼ばれていました。その裂け目のはるか南には、ムスペルヘムという何もかも焼き尽くす炎と光の地がありました。裂け目のはるか北には氷と闇の国ニフェルヘムがありました。ムスペルヘムから飛んできた炎と、ニフェルヘムから転がってきた氷の塊がジヌンガガープで衝突して、巨大な蒸気がもうもうとあがりました。そして溶け始めた氷のしずくから世界の最初の生き物である邪悪な巨人イーメルが生まれました。イーメルが氷の上に寝ていたとき、彼の右の脇の下から巨人の男の子が、左の脇の下からは巨人の女の子が生まれました。そしてイーメルの脚からは次々に巨人が生まれていきました。巨人達は霜の巨人と呼ばれました。
 溶けた氷からはまた大きな牝牛エードフムラが生まれました。エードフムラが氷を舐めているとき、ブーレという名の一人の男が氷の中からでてきました。ブーレは神々の祖先となる人だったのでした。 
 ブーレは三人の息子をもちました。オーデン、ヴィーレ、ヴェーという名前でした。
 三人の神々は乱暴なイーメルと巨人達に愛想をつかし、イーメルを落とし穴に落として殺してしまいました。そしてイーメルの死体から流れた青い色のおびただしい血は、世界を囲む海になりました。舟に乗って逃れた一組の巨人夫婦だけを残し、巨人達は皆死んでしまいました。三人の神々はイーメルの肉から大地を、骨から山脈や岩を創りました。そして頭蓋骨を持ち上げ天空にし、天空を支える四つの角に「東」、「西」、「南」、「北」という名の小人達を配しました。そして南から飛んでくる火の粉で太陽と月と星を創りました。太陽と月の後ろから狼に追わせて彼らが軌道を正しく移動するように教え込みました。
 イーメルの体にわいていた蛆虫は地中に潜って鍛冶の上手い小人になりました。
 三人の神々は霜の巨人の子孫のために一角を与え、ヨーツンハイムと名づけました。陸地の内部にミッドゴードと名づけた心地よい平野を創りました。ある日三人がミッドゴードを散歩していると木が二本倒れているのに出くわしました。彼らはその木から最初の人間の男女を創りました。そして彼らは彼ら神々の住む土地としてアースゴードを創りました。アースゴードには万物の父となった長老オーディンのほかに一二人の男神と一二人の女神が住むようになりました。

<神々の世界>
 オーデン達が創った世界は円盤のような大地に乗っています。イグドラシルという名のトネリコの大樹がその世界の地下から地上までを貫いています。イグドラシルの木には三本の太い根があって、一本の根は地下深くもぐっており、一本は地上に這い、一本は空中のイグドラシルの木の葉が茂りの中に延びていました。地下の一本は地下に住む邪悪な龍に常に齧られていました。地上に這う根は知恵の巨人ミーメルの頭の脇の知恵の湖のところに伸びていました。
 女神イドウンが庭で丹精込めて世話をしている林檎の木にたわわに生る林檎を毎日食べるおかげで、アースゴードの神々は永遠の若さを保っていました。イドウンがさらわれてしまうという事件が起きたときには神々はどんどん老いてしまいましたが、彼女が奪還されるとまた若さを取り戻したのでした。 
 神々を率いるのはオーデンでした。もともと頭の良かったオーデンは、さらに知恵を手に入れたくて知恵の巨人ミーメルの知恵の湖の水を飲むために左の目をささげました。
 アースゴードで一番力持ちの神はトールでした。トールはチャンピオン・ベルトのようなベルトをしっかり締めて腹に力が入るようにし、ハンマーを持ち歩き、それで巨人や山さえも砕くほど強かったのです。トールが二頭の雄山羊に繋いだ車に乗って空を翔るときには地響きがし、雷を伴いました。
 フレイは雨と太陽の輝きの神でした。フレイは収穫を司る神でもあり、また平和の神でもありました。フレイの双子の妹のフレイヤは美しい女神で愛の神でした。フレイヤは猫に引かせた車に乗って、戦いで死んだ戦士を迎えに行きました。
 巨人の息子でオーデンの養子であるローケもアースゴードに住んでいましたが、彼はずるがしこく、ことごとく神に迷惑をかけるような事件を起こしました。トールの妻シブの自慢の金髪をいたずらして全部刈り取ってしまったり、最もハンサムな神であったバルデルを、目の見えない神ヘーデルが誤って殺してしまうような悪巧みもしたのでした。
 ローケの子どもは神々に災いを及ぼす三匹の魔物でした。フェンリスウルベンという名の狼の魔物、ミッドゴード蛇、そしてヘルという地獄の魔女でした。
 オーデンの館の一つはヴァルハルという名で、そこでは死んだ戦士が夜な夜な酒盛りを繰り広げるのでした。ヴァルハラでのご馳走は脂肪がいっぱいの豚肉と甘いビールのような味のミョードというお酒でした。セリムネルという名の特別の豚の肉が最高の料理になりました。セリムネルは毎夕屠られましたが、食べつくした後骨を綺麗に並べておくと朝にはちゃんと生きた豚に戻っていたのでした。

<終末戦争>
 あるとき夏はまったく訪れず、一年中厳しい冬が三年間続き、そしてラグナロクと呼ばれる終末戦争が起こりました。巨大な狼達が太陽と月を飲み込みました。星星は地に落ち、大地は揺れ、岩は砕けて小石になりました。フェンリスウルベンが自由に飛び回り、海からはミッドゴード蛇が大きな津波を大地に向かわせました。巨人達が集まって神々との最終対決、ラグナロクの準備をしました。
 オーデンはフェンリスウルベンに飲み込まれてしまいました。トールはミッドゴード蛇に打ち勝ちましたが、蛇の毒が体中に回って死にました。フレイヤは地獄の門番である巨人スルトと戦って死にました。皆戦いで死んでしまい、最後は巨人スルトだけが残りました。スルトはムスペルヘムの炎を大地に放ちました。すべてが燃え、すべてが海に落ちました。そして世界に終わりが来ました。
 すべてが燃え尽きた後で、新たな大地が海の中からせりあがってきました。それは草が生え、風が香り、鳥が飛ぶ緑の大地でした。
 ただ二人生き残った人間の男女が新しい次の世界で生き始めました。

<後の世界への影響>
 北欧神話はその後の世界にも音楽や演劇などにかぎらず大きな影響を残しています。
 北欧では紀元一000年ころにキリスト教が普及し、北欧神話の世界を色濃く残したそれまでの土着の信仰はだんだんと姿を消していきました。けれども遠雷が聞こえてくるときに「トールが空を駆けているのだ」と北欧の人々は今でも口にします。
 北欧の神々というのは、人間の自然に対する畏怖、憧憬の象徴だったでしょう。

(By Pricken、2004 Nov)                           

*「北欧神話」の根幹を成すのは「スカンジナビア神話」ですが、「ゲルマン神話」と共通の部分が多いといわれます。また、サーメ神話、ケルト神話、フィンランド=ハンガリー神話の影響もあるのだそうです。つまり地理的な「北欧」と言語的な「北欧」にズレがあるため、「北欧神話の境界」は多少、曖昧です。

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