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2010年7月 5日 (月)

北欧の詩(36) 「トムテン」

「トムテン」

真冬の夜の寒さは厳しい
星は輝き瞬いている
ぽつんと建ってる農家の中で
皆が寝ている真冬の真夜中
月は沈黙の軌道を移り
雪は白く杉松に光り
雪は白く屋根に輝く
トムテンだけが起きている

家畜小屋の扉のところで
白い吹き溜まりに灰色に立つ
これまでの多くの冬と
同じように半月を見上げる
森に目をやり、
農家の庭をぼんやり取り巻く
塀のような杉松を見る
ずっと考え続けているのだ
けれども沈みこんでいるわけではない
奇妙ななぞなぞに取り組んでいるのだ

ひげと髪に手をやって
頭を振って帽子を揺する
「だめだ、これは難しすぎる、
だめだ、わしには解けやしない」
彼のいつものならいのごとく
そのうち思考を放り出す
なにかをするのだとしたら
自分の為すべきことをしよう

食糧倉庫と道具庫に向かい
すべての鍵に触ってみる
牛は月光の中に眠り
囲いの中で夏を夢見る
忘却の手綱と鞭と馬具
厩のポッレはそれでも夢見る
彼のかいば桶の中が
良い匂いのクローバーでいっぱいだったら

羊とヤギの囲いへ向う
彼らが眠っているのを見る
鶏のところへ行って
雄鶏が一番上の枝で胸を張っているのを見る
犬小屋のカーロは藁の上で元気
目を覚ましてちょっと尾を振る
カーロはトムテンの知り合いで
親しい友人でもあるから

トムテンは最後に
農場の人々のところへ忍びこむ
昔から彼がよく知っている人々
彼らも勤勉なトムテンを名誉に思っている
それから彼は子ども部屋を
爪先立ちで歩く
小さな可愛い顔を覗く
だれにもいじめさせないぞ
からの最大の幸福なのだから

こんな風に彼は見てきた
父と息子、多くの繋がり
うたた寝する子はどこから来るのか?
祖先と子孫と親戚だらけ
栄えて年取りそして去る
でも、どこへ?

謎は深まり
謎は解けない!

トムテンは屋根裏に上がる
そこに彼の住処があるから
干草置き場の最上段
白鳥の巣の近く
今は白鳥は留守だけど
春には花と葉と一緒に
彼女はまた戻ってくるだろう
可愛い夫を後に従え

彼女はいつもさえずって
旅の思い出を語る
けれどもそれはなぞなぞではなく
トムテンの意識には残らない
小屋の壁の割れ目から
月がトムテンのひげを照らす
ひげの一本がきらりと光る
トムテンは考え込んで思考をめぐらす

森も下界もすべて沈黙
外の命は凍りついてる
遠くの滝から来る音が
ゆっくり微かに聞こえてくるだけ
トムテンは耳を傾け半分夢の中で
時の流れを聞いた気になる
どこに流れていくのだろうか
どこに源があるのだろうか

真冬の真夜中の寒さは厳しい
星は輝き瞬いている
ぽつんと建ってる農家の中で
皆が夜明けを前に寝ている
月は沈黙の軌道を移り
雪は白く杉松に光り
雪は白く屋根に輝く
トムテンだけが起きている

   ヴィクトル・リ-ドベリィ (Viktor Rydberg, 1828-1895、スウェーデン)

*トムテンというのはサンタクロースも意味しますが、ここでは多分小人の意味でしょう。

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