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2010年7月11日 (日)

北欧神話(31) 第六章<トールの妻シフが髪を失う>(1)

第六章<トールの妻シフが髪を失う>(1)

 トールと彼の妻シフ、そして彼らの二人の子どもである力持ちのトルードと勇ましいモーデは、オーデンの家からあまり遠くないトルードバングの大きな家に住んでいた。シフと子どもたちはたいてい家の周りのさまざまな農作業で忙しかったが、トールはしばしば戦争に出かけていき巨人と戦った。
 ある朝、トールがトルードバングの家にいたとき、不快な耳を劈く音で目を覚まされた。ひらひらとした白い下着を着た、ほとんど髪の毛の無い生き物が、叫びながら彼の寝床へまっすぐに押し寄せてきたのだった!
 トールは一瞬迷ってから、それが彼の妻だとわかった。
「トーーーールーーー!」と彼女は鼻声でしゃべった。「だれかが私の髪を切り取ってしまったの!」
 雷の神はむげに起こされるのは好きではなかったので、すぐ不機嫌になった。彼はシフのつんつん頭に目をやって、彼女の目を見つめた。
「こんなことをしたやつをやっつけてやる」と彼はちょっと考えた後で約束し、急いで服を着た。
 痛烈な泣き声から離れて、家の外に出るのは気持ちが良かった。トールは、泣き声と歯軋りを聞いているよりは、犯人を追いかける方が良かった。彼は誰がそんなことをしたのかを薄々気づいていたからだった。
 トールは少し前から一族の仲に一人信頼できない者がいるということに気づいていた。けれども彼の父、オーデンは彼の言葉に耳を傾けようとはしなかったのだった。彼がトルードバングの良く葉の茂った茂みの中を進んでいくと、ローケが頭を木の幹に傾けて芝の上に寝ているのが見えた。トールはひそかに彼に近寄り、彼の服をしっかりとつかんだ。
「このちっぽけな恥知らずめ!」と彼は怒鳴り散らして、寝ぼけているローケを揺らした。「なんていうことをしたんだ!妻は髪の毛一本も残っていないじゃないか!」
ローケは体をひねってトールの手を逃れ、息をついた。
「ああ。もう気がついたのか、、つまり、君の妻のきれいな髪を切るほうが良いと考えたのは僕だけじゃなかったんだよ」ローケはおもねるようにうなずいて、服を直そうとした。「あのねえ、トール。アースゴードのほとんどの住人がシフにちょっと宿題が必要だと考えたんだ」と彼は続けた。「彼女は自分の髪のことばかり考えてるし、、」
 トールは彼の腕を高く掲げ振り下ろそうとしたが、ローケはトールの影にしゃがんだ。
「だめだよ!ぶつなよ」と彼は泣き声で言った。「ちゃんと元に戻すと約束するからさ!」
「最初から何もしなければ良かったじゃないか」とトールの氷の目をしてうなった。
「まあそうだけどね、じゃあちょっとどうにかしてくるさ」とローケは愛想よく言って、何歩か後ろに下がった。後ろを向いて走り去る勇気が出る前に。

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