北欧神話(27) 第四章<ローケが巨人チャツセとけんかをする羽目になりイードゥンが誘拐される>(5)
第四章<ローケが巨人チャツセとけんかをする羽目になりイードゥンが誘拐される>(5)
ローケが今回に限り本当のことを言ったのは、イードゥンがいなくなれば彼自身も歳をとるのだということに思い至っていなかったからだった。彼は今やチャツセにイードゥンを届けたのを後悔していた。
神たちは立ち上がってそれぞれに自分の刀の柄をつかんだ。
「座って、座ってください」とローケは言った。「聞いてください。提案があります!」
神たちは敵を見るように彼をにらんだが、おとなしく座った
「僕にフレイヤの鷹にならせて偵察に行かせてください」と彼は願った。「僕はそれを前に借りたことがあってうまく乗りこなせますから。でもまだ僕に力が残って得いる今のうちに急がねばなりません。イードゥンをつれて帰ってきますから!僕にはそれができるとわかるんです!」と彼は保証した。
フレイヤの鷹港に座ったものは鷹になった。そのような鷹はすばやく、静かな偵察者だった。
神たちはローケがしばしばフレイヤのその鷹港を借りるのを知っていた。彼はアースゴードの上を自由に飛び回り、死と向かい合わせになるかのような急降下をするのが好きだったのだ。
オーデンが手を掲げた。
「われわれは賢くこのことを見定めねばならぬ。チャツセは卑怯にもお前ローケに魔法を使って惑わしたのだ。しかしお前が引き起こしたことを正すのに成功しなければ、お前の青あざだらけでしわしわになったすぐに死体のようになってしまうことだろう」
ローケがチャツセの城の上を滑るように飛んでいると、柵を周りにめぐらしたトリンヘイムの庭にイードゥンが自由に歩き回っているのが見えた。彼は老いで弱くなった自分に腹を立てていたし、鷹としては彼はそれほど強くなかった。彼はイードゥンをつかみ挙げることはできないだろう。
チャツセの姿は見えなかった。ローケはイードゥンが中に閉じ込められてしまう前にすばやく立ち回らなければならないとわかった。僕は魔法を使わなくちゃ、と彼は意気消沈して考えた。魔法!
ローケの頭の中をいつもは使われない言葉が駆け巡った。彼の口から熱狂的にぺらぺら最初の魔法の言葉がしゃべりだされたが、下の庭には何の変化も起こらなかった。二回目の魔法の言葉も同じように効果が無かった。けれども三回目に彼はイードゥンを木の実に変えることに成功した。
ローケは心の中で歓声をあげ、急降下し、その鷹の爪に木の実を挟んだ。そして彼は方向を変え、できる限りの速さでアースゴードへ向かった。
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